安田監督は実家のコメ農家を継ぎながら、映画製作も続けている。そんな安田監督にコメ問題のリアルを聞いた。
「お米の買い上げ価格が低すぎて、30キロ作るたびに数100円から1000円近い赤字が出る。僕がいろいろな仕事をやってきたなかで、一番黒字化が難しいのは米作。自分たちがお米を作らなければ誰かが困る。使命感と責任感。異常に使命感が強い人の、犠牲的な行為によって、日本の主食が成り立っていることをまずは知ってほしい。自助努力ではもうどうしようもないのが実感」(安田監督)
安田監督は2年前、コメ農家だった父親が亡くなったことで、京都の実家で農家を継ぐことになった。監督業を続けながら初めて行うコメ作りに悪戦苦闘し、コメ作りのリアルを知った。
実は安田監督が『侍タイムスリッパー』よりも以前に制作した映画『ごはん』(2017年)が脚光を浴び始めている。
米農家の父が突然亡くなったことで、膨大な広さの水田を預かることになったヒロインが後継者不足、そして採算の合わない現実、そんなコメ作りに奮闘する姿をリアルに描いた作品だ。
日本一美しく田んぼを撮りたいという安田監督のこだわりで完成するまで4年の歳月をかけた。この映画を通じて表現したかったこととは何か。
「秋、土用干しと言って、一回1週間ぐらいカラカラにして、田んぼをひび割れるぐらいまで乾かして、一気に水を入れて穂をはらませるみたいな手法がもう何百年も伝わっているとか、コメ作り自体に面白いヒントがいっぱいある。そして、日本映画で一番美しく田んぼ周りを撮りたいし、ご飯が出来上がるまでに農家がどういう手順で、どういう思いで作ってきたのかを分かってほしいなという思いで作った」
しかし、この映画が公開されて8年、コメ農家を取り巻く環境は大きく変わったという。
「現状は描かれた世界よりも、もっと悲惨な感じになっている。映画のなかでは、お父さんが70歳ぐらいで亡くなるが、実父は82歳で亡くなる。馬力のある責任感があって頑張ってやろうとしてる農家が高齢化で亡くなっている。
そもそもできない田をボランティアみたいな感じで引き受けて、返した時にその田んぼが一気に耕作放棄地になってしまって、そういうのが実は直接のコメ不足の原因になっている」
農水省の調査によると、農業従事者で最も多いのは65歳以上で69.6パーセント、兼業農家は77.7パーセントにも達し、別の仕事で農業の赤字を補填しているケースが多いという。
「僕は補助金だとやる気がなくなる。補助金は誇りの問題でもある。基本的には政府の買い上げ価格を経営が成り立つぐらいまで高く上げて、そして頑張っていいものを作ったら、いい値段でたくさん買ってもらえるという、そこの買い上げ価格をまず今の数倍、2倍3倍に上げて、それを消費者に安く卸すという、国策としての主食を守るという意味で、政策転換のなかでやっていかないと難しい。
いわゆる経営的な問題を、補助金をもらうから言いなりにならないといけない。経営の自主性を失うというのが怖い」
【映像】 涙ながらに語る安田監督(実際の映像)
https://abema.tv/channels/abema-news/slots/Eo21hpPZ1Qo7CB?pl=1&resumeTime=3513&utm_campaign=times_yahoo_20250526_free_10180163_centertx&utm_medium=web&utm_source=abematimes
引用元: ・【コメ農家を営む侍タイムスリッパー監督が涙の訴え】「米の買い上げ価格が低すぎて赤字が出る、犠牲的な行為によって日本の主食が成り立っていることを知ってほしい、政府は価格をまず今の数倍、2倍3倍に上げて」